【ベトナム株】製糖業界の株価上昇の一因と有望銘柄を紹介
この記事はベトナム株への投資をすでにはじめられている方向けです。
今回は2021年に入ってから砂糖を製造している銘柄(製糖銘柄)の多くが、年初から株価上昇している一因を解説していこうと思います。
株価上昇の一つの要因はタイ産砂糖への課税決定
2021年の年初と比べ、製糖銘柄のベトナム株の株価上昇の大きな要因として考えられるのは、タイ産の砂糖に対し関税をかけるという決定がなされたことです。
※この記事を当初書いた3月時点では実施時期が未定でしたが、6月になりベトナムの商工省が正式に決定したようです。
タイから輸入する精製糖と粗糖にダンピング防止税と補助金相殺関税を 47.64%の税率で課すとの内容です。 2021 年 6 月 16 日に発効、有効期限は 5 年間のようです。
※タイ側がこの決定を再考するよう要請しており、今後また状況に変化がある可能性があります。(参照元のベトナム語の記事はコチラ)
この決定には、「タイからベトナムへの砂糖の輸出がベトナム国内の砂糖産業に打撃を与えている」というベトナム商工省の主張があります。
後述するアセアン諸国の物品貿易協定により、タイからベトナムへ輸入した砂糖への関税が2020年の年初より撤廃されていました。
AD(アンチダンピング)課税とは
今回、ベトナム商工省はAD(アンチダンピング)課税をタイ産の砂糖へ課すという決定をしたわけですが、そもそもAD課税とはどういったものなのでしょうか?
輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国の国内産業に被害を与えている場合に、その価格差を相殺する関税を賦課できる措置のことです。この措置は、WTO協定(GATT・AD協定)において認められているもの (経済産業省HPより引用)
今回の場合、タイからベトナムへの安価な価格による輸出が、輸入国であるベトナム国内の製糖産業にダメージを与えているため、その価格差を相殺するためベトナム側が関税を課す決定を下したということになります。
タイ産の砂糖が安価なのはタイ政府の助成があることも理由のひとつのようです。
AD課税が決定された背景は輸入量の急増
今回、課税が決定された背景には安価なタイ産砂糖の輸入の急増があります。
(グラフ引用元:S&Pグローバルプラッツ)
この表は2019年、2020年の各国のタイからの砂糖の輸入量をグラフにしたものです。ベトナム以外の国は2020年度は前年より輸入量が減っています。
それに対しベトナムのタイからの砂糖の輸入量のみ、2019年比で2020年は約330%、すなわちタイからの輸入が約3.3倍増加しています。
輸入量増加の理由は関税協定の実施時期と関係アリ
ベトナムがアセアン諸国との関税障壁を撤廃するという協定の実施をはじめた時期がコロナの感染がはじまった頃、すなわち2020年の年初でした。
この関税協定はASEAN物品貿易協定(ATIGA)と呼ばれるものです。ASEAN物品貿易協定とはアセアン諸国での関税撤廃を約束した協定です。
ASEAN各国ではASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づく先進ASEAN諸国における関税撤廃(2010年1月1日)に続き、後発ASEAN諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)でも2018年1月1日に、関税が原則全て撤廃。引用元:ジェトロ(日本貿易振興機構)HP
こちらの協定、上記の通りベトナムでも2018年より実施するとの原則があったようですが、物品によってはベトナム政府の非関税措置の導入によって実質的な関税撤廃の開始時期がズレた運用となっているようです。
そのため、今回の砂糖の場合は関税撤廃が開始されたのが2020年の年初から実施されていたようです。
ベトナムの製糖銘柄に共通する課題
今回のタイ産の砂糖への課税措置が実施されれば、タイからの輸入量が減少し、砂糖の販売価格も引き上げられ、ベトナム国内に限れば売上増加となる可能性が高いと考えられます。
今後の課題として、砂糖の輸出量を増やし売上増加を計ることになってきます。そこで必要になるのがベトナム産の砂糖の品質向上です。各社とも品質向上やオーガニック商品の開発に注力しています。
また、2020年8月よりベトナムと欧州の関税免除協定(EVFTA)が発効されたことにより、砂糖の場合も段階的に欧州への輸出関税が引き下げられていくようです。
これを追い風にできるかどうかは周辺諸国との品質や価格面で優位に立つことができるかどうかにかかる側面が大きいと予想できます。
ベトナム株で有望な製糖関連の4銘柄を紹介
ここまでは、ベトナムの製糖関連の銘柄の株価が2021年の年初来との比較で上昇している背景や今後の課題を解説してきました。
ここからは具体的な株価の動きも含め、今後の成長が期待される有望な製糖銘柄を4つ紹介したいと思います。
①SBT/タインタインコン・ビエンホア製糖 (ホーチミン証取)
2008年2月上場。ベトナム国内大手の製糖企業で国内シェアが約4割。製糖やサトウキビ栽培が主な事業です。ラオスに現地法人を設立したり、2018年からは米国へ砂糖を輸出するなど、海外事業にも力を入れています。
↑ベトナム南部を本拠にしており、ホーチミン市内のスーパーにはこういったSBTの砂糖の商品が数多く陳列されています。
ちなみにこの砂糖はホーチミンのイオンやコープマートに行くと最近はいつも目立つ場所に陳列されています。ベトナム株投資はじめて以来、スーパー行くときも投資家目線になってしまいます(笑)
株価推移:年初(1/4終値):20,950 ⇒ 22,200(6/23終値)
会社HP ←英語表記あり
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②LSS/ラムソン製糖 (ホーチミン証取)
2008年1月上場。砂糖やアルコール飲料の製造が主力事業。2020~2021年度(2020年7月~2021年6月)の売上高目標を先日、発表していました。前年比で大幅な増収増益を発表しており、年初来の株価も3ヶ月で約6割ほど上昇しています。
株価推移:1/4終値:8,050⇒12,300 (6/23終値)
会社HP ←英語表記あり
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③SLS/ソンラ製糖 (ハノイ証取)
2012年10月上場。西北部地方ソンラ省に生産拠点を置く製糖企業。砂糖製造、販売のほかアルコール生産やガソリン販売が主な事業です。株価は年初来2ヶ月で約7割ほど上昇しています。
株価推移:1/4終値:72,400⇒134,000(6/23終値)
会社HP ←英語表記あり
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④QNS/クアンガイ製糖 (未上場/Upcom)
2016年12月上場。ベトナム中部クアンガイ省に本拠を置く企業です。地場の豆乳最大手企業で製糖事業も手がけています。
豆乳ブランドの「Vinasoy」を展開しており、ベトナムのスーパーではVinasoyの飲料が多く陳列されています。私のベトナム人の妻もこの豆乳が好きみたいでよく飲んでます(笑)
ベトナムの都市部ではスポーツジムに通う人が増えるなど健康志向が高まってきており、Vinasoyの売上も年を追うごとに増加傾向にあります。
株価推移:1/4終値:39,900⇒42,000 (6/23終値)
会社HP ←英語表記あり
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まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は時事トピックの解説もしつつ、製糖関連のベトナム株の銘柄を紹介してきました。
私自身も2021年6月現在①のSBTを800株のみですが保有しています。以前はQNS(クアンガイ製糖)の株も保有していましたが20%ほど株価上昇した際に手放してしまいました。今後、別の銘柄を含め追加投資を検討しています。
投資はコツコツ勉強しつつ経験値を積み重ねるのが大切ですね。無料でできる投資の勉強方法を2つの記事で紹介しているので気になる方は下記の記事もチェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。ではでは!
※記載内容は2021年6月時点の情報、2021年7月に一部リライト。